音声SNSのルームに入ったのは、時計の針が深夜1時を回った頃でした。
在宅勤務で部屋から一歩も出ない日が続き、昼と夜の境界線がすっかり曖昧になっていました。1人暮らしのワンルーム、明かりを消した暗がりのベッドの中で、スマホの液晶画面の冷たい光だけが顔を照らしています。アプリでの200人との出会いに疲れ果て、かと言って1人で夜を迎える孤独にも耐えられず、ただ「誰かの声」を求めて、なんとなくそのコミュニティのボタンを押しました。
そこで流れてきたのが、友人M君の低くて落ち着いた声でした。
「素敵な人も多いけれど、想像以上に厳しい世界だよ」
結婚相談所のリアルを語るその言葉を聞いた瞬間、暗闇の中でハッと息を呑み、ベッドの上にガバッと起き上がりました。最初に胸に去来したのは、恐怖に似た戦慄でした。アプリで100通送っても全無視されるレベルの激戦なのに、その無法地帯を勝ち抜いた精鋭たちが集まる相談所は、一体どれほど恐ろしい場所なんだ、と。
でも同時に、別の考えが浮かびました。「M君がわざわざ『厳しい』と言うのは、そこが本物の市場だからじゃないのか」
僕はベッドから飛び起きると、パソコンの前に座り、その夜のうちに結婚相談所の仕組みを調べ始めました。時計はすでに午前3時を回っていましたが、キーボードを叩く指が止まりません。大手相談所の特徴、かかる費用、「31歳、独身、年収600万のエンジニア」というスペックがその市場でどう評価されるのか。
窓の外がうっすらと白み始める頃、2年間消せなかったスマホのアプリをすべてゴミ箱へ放り込みました。
あの夜が、僕の婚活の転換点でした。
アプリの現実。100いいねで会えるのは3〜5人
転換点の話をする前に、アプリ時代の数字を正直に書いておきます。
・100いいね
・20マッチング
・10人から返信
・やり取りが続くのは6〜7人
・実際に会えるのは3〜5人
マッチングしても半分は返信が来ません。返信が来ても会えるとは限りません。これが30代前半、エンジニア、年収600万円のリアルな打率でした。
「俺の何がダメなんだ」と思い続けました。でも今なら分かります。これは僕の問題ではなく、アプリという仕組みの問題でした。
進化心理学者のブルッフとニューマンが2018年に約15万人分のログを解析した研究によると、女性のもとには1ヶ月で1500通を超えるメッセージが届いていました。1日50通、20分に1回、見知らぬ男からアプローチが来る計算です。その濁流の中で、僕の1通が読まれる確率を考えると、気が遠くなります。
婚活市場は、男女で別のゲームが動いている
アプリでの立場は、年齢によって逆転します。
ブルッフの研究には、男女それぞれが受け取るメッセージ数が年齢とともにどう変わるかを示した曲線があります。女性は20代前半にピークを迎えて下がっていきます。男性は逆に、年齢とともに増えていきます。この2本の曲線は、30代前後で交差します。
IBJが公表した成婚白書でも、女性の成婚年齢の最頻値は30歳、男性は34歳です。国税庁のデータでは、男性の平均給与は20代後半で429万円、40代後半で653万円。同じ人間が年を重ねるだけで200万円以上の差がつきます。
30代男性が相談所に入るタイミングは、感情論ではなく、市場の原理から見ても合理的な判断です。
一度目の相談所で、病んだ
実は相談所に入ったのは、IBJが初めてではありませんでした。
それより2年前、別の相談所で活動していたことがあります。結果は惨敗でした。
お見合いのために休みの日を削り、何日も前からお店を調べ、スーツを着てスタンバイしました。一人の人間として、お相手に敬意を払ってその場に臨んでいました。それなのに、出会った瞬間に浴びせられたのは「クーラーが効きすぎている」というクレームでした。
僕個人への興味ではなく、お店の空調へのクレーム。怒りを通り越して、情けなさと虚しさで目の前が真っ暗になりました。相談所にさえ入れば全員が「一緒に人生を歩む仲間候補」だと思っていた僕は、あまりの落差に完全に病んでしまいました。
約10回、3ヶ月活動して限界を迎えました。クーラーの女性ほど極端ではなくても、「男が楽しませて、リードして、エスコートするのが当たり前」という意識が抜けていない女性にばかり当たりました。アプリの審査員気質が、相談所の中にもそのまま持ち込まれていました。
10回で見切りをつけ、足を洗いました。
「相談所なら同じ」は間違いだった
2回連続でグラウンド選びを失敗するわけにはいきませんでした。
誰かにアドバイスをもらったわけではありません。自分で徹底的にネットの口コミや各連盟の規約、成婚までの流れを調べて、ある事実にたどり着きました。
同じ「結婚相談所」という名前でも、仕組みが180度違います。
データマッチング型の限界
一つ目は「データマッチング型」の仕組みです。プロフィールを検索して、お見合いの調整からデートの進捗まで、基本的に会員同士が直接やり取りします。仲介役はシステム上の手続きを管理するだけで、中身には深く関わりません。だからこそ、中にいる女性たちの意識がアプリの時と変わらず、審査員気質のまま放置されてしまっていました。
仲人仲介型が根本から違う理由
IBJが採用している「仲人仲介型」は違います。僕と相手の女性の間に、それぞれプロの仲人が必ず一人ずつ入ります。お見合いの感想から、次に進むかどうかの意思表示、お相手が今どう思っているかという本音まで、仲人同士が裏で連絡を取り合って共有してくれます。
この仕組みの違いを画面越しに理解した瞬間、脳裏に深夜1時のM君の言葉がよみがえりました。
「素敵な人も多いけれど、想像以上に厳しい世界だよ」
その言葉の真意が、ようやく腑に落ちました。M君が言っていた「厳しさ」とは、ただお見合いが組めないということではありません。仲人というプロの第三者が間に入り、会員の「結婚への覚悟」や「お相手への態度」を後ろから冷徹に見張っています。だからこそ、アプリのような審査員気質な振る舞いは一切通用しません。文字通り、大人が本気で人生の契約を結びに来る「厳しい=真剣な世界」なのです。
「前の相談所は、ただ身元が保証されただけの高級なマッチングアプリだったんだ。僕が本当に移動すべきだったのは、仲人が裏でガッチリと手綱を握る、IBJという本物のグラウンドだったんだ」
これが、IBJへの移籍を決めた最大の決め手でした。
IBJに入って、最初に驚いたこと
入会して最初に「アプリと違う」と感じたのは、仕組みの話です。
お見合いが成立したら必ず会えます。ドタキャンしたら罰金。全員が独身証明書を提出しています。全員が結婚を前提にグラウンドに立っています。
アプリは女性無料です。いい加減な使い方をする人も一定数います。でも相談所は違います。お互いに高い入会金を払い、書類を揃えて来ています。「約束は守る」という前提が最初から成立しています。
この違いは、想像以上に大きかったです。537件の申し込み、48人とのお見合い。この数字を積み上げられたのも、「会うと言ったら必ず会える」という土台があったからです。
FAQ
- 相談所はアプリより高い。コスト的に見合いますか?
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アプリで2年間デートに使った時間とお金を計算してみてください。僕は200人以上と会い続けました。その時間とお金があれば、相談所の費用はとっくに回収できていました。「高い」と感じるのは、アプリの隠れたコストが見えていないからかもしれません。
- 相談所に行くのは「負け」じゃないですか?
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2年前の僕も同じことを思っていました。でも今は違います。戦う場所を変えることは負けではなく、戦略です。同じ努力をするなら、結果が出やすい場所でやった方がいい。それだけの話です。
- どの相談所でも同じですか?
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同じではありません。僕は一度、別の相談所で失敗しています。「データマッチング型」と「仲人仲介型」では、集まる会員の意識も、サポートの深さも、根本から違います。相談所選びは、入会前に仕組みをきちんと調べてから決めてください。
- 相談所でも断られます。何が違うのですか?
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断られ方が違います。アプリは無視されます。相談所はシステムを通じて結果が届きます。無視されないだけで、メンタルの消耗が全く変わります。僕は537件申し込んで、その分だけ「次へ」と切り替えられました。
結論
あの深夜3時、窓の外が白み始める頃にアプリを全部消しました。
「相談所は負けだ」と思っていた僕が、一度失敗して、仕組みを調べ直して、IBJで48人とお見合いして成婚しました。変わったのは努力の量ではなく、戦う場所と仕組みの理解でした。
アプリで彷徨っているあなたへ。出会い方はそれぞれでいいです。でも結婚に結びつく確率を上げたいなら、最初から結婚を前提にした人間が集まる場所に移動する方が、圧倒的に早いです。
それが、537件の申し込みと20本の論文が出した、僕の結論です。
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